OBインタビュー
川越一成(キャメラマン)

川越さんは、映画・ドラマとたくさん作品つくられていますけど、違いってありますか? 川越:いちばん違うのは画面の大きさ、スクリーンサイズ。細部まで気をつけなくてはっていうのはあるし。逆に家庭のテレビも大きくなってきたので、もうちょっとサイズを考えなくてはいけないのかなって思ったりもするけどね。 昔はテレビの画面が小さかったからグループショットも寄ってって思ったけど…今は色々な視聴環境があって難しいね。 現場もイメージ的には違いそうですが、どうなんですかね? 川越:うーん。そうね。映画をやってるラインプロデューサーとかは「映画でもこういう作品はテレビのカメラマンでやったほうがいい」とか「テレビなんだけれどもこれは映画をメインでやっている撮影監督がやったほうがいい」とか言うね。一概にどっちかの出ということではなくて、その人の個の力という部分だとも思うけど、現場の仕切り方とか画づくりの違いはあるからね。お互いの作品を見て勉強し合うよね。ロールを見て「このカメラマンがやっているんだ」とチェックする。 作品を見て、ロールを見て、「あーそうだと思った!」って・・・思うのですか? 川越:うん、思う。「あーやっぱりそうだよね。じゃないとこうはならないよね。」とかね。全然トーンが違ったりするからね。 撮影をしていてどの瞬間が楽しいですか? 川越:本をもらって、ロケハンして衣装合わせして・・・クランクインに入るまでが楽しみ。まだ形にならないのでどうにでもできるし、ちゃんとやらなきゃいけないというプレッシャーも当然生まれてくるわけじゃない。この作品はどのカメラで撮るのがいいのかとか、このロケ場所でいいのかとか。衣装合わせもこうなりそうだけど、本当にいいのかとかね。例えばロケハンしたときにバックが茶色い壁だから、その色じゃない方がいいんじゃないかと指摘することもある。そんなインするまでの準備が楽しいかな。 さすがだなと思います。準備に時間をかけて他の部署の動きも見てくれる撮影部だと本当にクオリティが上がると思います。 川越:全部の画に責任を持つつもりでやってるから。始まっちゃったら、監督や制作部とこの現場を選んだのは自分だし、衣装も見ているし…スケジュールもあるので、後戻りはできないので。そこにいくまでのスタンバイが一番大事だし、楽しいところだなって思う。 どういうコミュニケーションを監督とはとっていくんですか? 川越:もちろんそこは監督の思った方向に近づけられるように・・・これはベテランだろうと若手だろうが監督がどういうふうにしたいのかっていうのを大事にしてる。もちろんどうやろうか?って振られたら、自分が本を読んで頭の中で描いているものを話すよ。台本には和室って書いてあるけど、洋間のイメージの方がいいんじゃないかとかそういう提案もするかな。黙っていられない性格というのもあるんだけども(笑)淡々と進めるのももちろんいいんだけど、いろいろな人の意見を聞いてより高みを目指していくというのがいいよね。 台本や小説からカメラマン視点で見て実現していくんですね。 川越:最初台本をもらっても小説を読んでも画がでてくるしね。僕らはそれを実物にしなくちゃいけないの。ただ全部読んでおもしろかったにはならない。そこから「さてと、これはどうしたものか」と・・・「白い巨塔」だったら前の作品を鮮明に覚えているけれども、せめて同じ、いや超えるような作品にするためには、どうなんだとか。『SP』というドラマの時は本広さんともディスカッションして、刑事ドラマとは違ってアクションが多めなので、カメラはこういうカメラにしようとか・・・そういうディスカッションをしたね。 変わったカットはやりがいを感じるんですか? 川越:いろいろな作品を見て、経験しているから自分のたくさんある引き出しから出してきて、このシーンの時にこれを使おうって思ったりするんだけど…決めて用意していくと、だいたい失敗するよね。その時のその瞬間をどう撮るかっていう、閃きの方がはまることが多いかな。 天候に左右される仕事ですよね。 川越:ワンシーンの中で晴れた、曇った、雨降った、雪降ったがあった時もあるよ。2時間ドラマのラストって崖とかさ広いところでロケするじゃない。海沿いって天候が荒れるので・・・そういうときは、知らない顔をして淡々と進めるけどね。つながらないって言ってもその日で撮り上げないといけないから。緑をバックにするよりも空をバックにして、白くて雨も雪もわからないようにしてみるとかね。淡々と進めさせていただきます(笑)色んな工夫をしながら本の内容とかお芝居を面白く撮ることに終始して気にならないように入り込ませる。 いろいろな現場を経験しているからこその工夫ですね。 川越:そうそうそう。どうしたらやれるのかっていうね。『将太の寿司』というドラマがあったときに、北海道の小樽に行って、現場のお寿司屋さんの実景を撮ってたら雪が降ってきて…雪のカットも欲しいんだけど、ナイトシーンの晴れのカットがなかったんですよ。「この雪どうする…?」という話になって、長い木2本とビニールで屋根をつくって見えないように撮ったことがありましたよ。学園祭のノリみたいな (笑)プロでも工夫で乗り切る。